コスタンティーノ・プンツォは変わり種だ。
せっかく入った難関ピサ大学数学科を3年で中退後、空調設備会社からジーンズメーカー、婦人服メーカーと転職を繰り返した後、ロンドンハウスへ。
そこで職人の腕と仕立て服の素晴らしさに目覚めたのだ。
彼はいう。
「この仕事は濡れ手に粟ということは決してない。
でも、50年後は博物館に収蔵されてもおかしくないものを作っているんだ。」引用:ナポリ仕立て 奇跡のスーツ
昨日、ナポリの職人の話をしたので、
今日もコスタの話でも。
店舗を持たず、出張仕立てをするコスタ。
工業化のすすむ近代的な職制に疑問を持ち、
100年前の形態を復活させる。
先ほど引用した本のなかで、
こんなコスタの言葉が引用されている、、、
「ナポリ仕立てのスーツはイタリアはおろか世界一のレベルを持っている。
せっかくの我々の技術は内に向けられるべきではない。
もっと広い市場を狙うべきなのだ。」
と。
後継者もいない職人の腕、センス、文化を継承して残していくべく、
コスタは世界にでた。
ローカルの良さをグローバルに届けるために。
彼自体は職人ではなく、
フィッターでありコーディネーター。
いわばジェネラリストである。
この前の受注会でのこと。
春夏用にオーダーしたジャケットと
パンツのバンチが廃盤になっていたので、
生地を選び直すことになった。
もともとオーダーしていたものは、
ブルーグレー系をベースにした
チェック生地。
それに、オフホワイト系のパンツ。
爽やかな感じで、春夏にはいいかなあ、と。
その場にいた木坂さんにも、、、
「そういえば、シアサッカーのジャケットとか着てるよね。」
なんて言われた。
でも、今回新しくコスタが提案してきたのは、
ブルー系でもグレー系でもなく、
ブラウンやオレンジといった暖色系のものばかり。
いや、これは予定していたのと違うんだけどな、
と思いつつもでてくるのは、
赤やボルドー系のチェックなど暖色系。
きっと僕の手持ちのものや
見た目の雰囲気、顔の形や体型、
目の色、髪の色などを総合して
提案してきてくれている。
日本のショップ店員とちょっと違うのは、
どれでもすすめてくるのではなくて、
これはやめておけ、これは違うみたいに、
彼の中にある確固たる美学やセンスで
提案してくる(しかも、強めに・笑)。
まあ、そんなところも含めて
オーダーは楽しいし、
生地との出会いも大切なポイント。
結局は風合いも含めて気に入った
古いヴィンテージのゼニアの生地で
ジャケットを決めた。
予定していたイメージとは違って
暖色系のもの。
パンツも白やオフホワイトなどは
汚れが目立つから既製品でいいだろう、と。
せっかくスミズーラすらなら
こっちだ、毎年、新調するならいいだろうけどね、
なんてコスタは言う。
前回のときも言ってくれよ、
と思いつつ、確かにそうだよな
って思って結局マロン系の生地でパンツをオーダー。
このように、予定は大幅に変わったけども、
こういう対話をしながら、いっしょにつくりあげていく感じが
オーダーメイドの醍醐味だと思う。
工業製品は工業製品で良さがあるだろうけど、
手作りの良さはこういったところにも現れる。
ネットで1クリックでものを買うっていうのも
いいけど、こういった体験やプロセスを味わえる
ところに僕自身は惹かれているのだと感じる。
僕らサービスを提供する側も
こういった対話しながら
作り上げていく感じを意識していくといい。
物や情報に溢れて、疲れているひとが多いからね。
では、また明日。
島田晋輔
PS)
今日の一曲は、こちら、、、
いい歳して服装にはトンと無頓着。
以前島田さんが言われた服装はエチケットという言葉を思い出します。
流石に今は一流の物を着込む立ち位置ではないので、安価なもので精一杯なのですが、ここで一流それ以外とが分かれるホントのところなのかも知れません…
ダブルのスーツなんか似合うと思いますよ!
にわとりが先か卵が先か、みたいな話になりますが、、、うまくいったから整えるというより、整えたからうまくいった、、、ような気が僕はします。
この提案力、対話力は学びたいですね。
自分の仕事への自信と相手への本当にいいものを提供したいという想いでしょうか。
提案力、対話力。
キーとなるチカラですね。
まさに、自己確信と相手への想い。
見習っていきたいですね。