Walk on the Wild Side〜ワイルドサイドを歩こうよ〜

小さな変化

河合さん東京での受注会でのこと。

「こちらの生地の方が男性的で
 カチッとした雰囲気になると思います」

ミラノで活躍する職人さんの河合さんの
仮縫いがあった。

2015年の10月に初めて河合さんに
スーツをオーダーしてからやっと完成。

丁寧な工程を経て、
素敵なスーツが出来上がった。

いまは、カジュアルにも使える
ジャケットをオーダーしていて、
この日は仮縫い。

目黒にある小さなコンセプトルームで、
静かに対話。

音楽も全くかかってない無音の部屋で、
河合さんと二人でいろいろな話をする。

出来上がったスーツを着て行ったのだが、
そのスーツ姿をみる目はドクターのよう。

着こなしから僕の小さな体型の変化を感じ、
帰り際に、少し計らせてもらっていいですか、
と。

結果、ウェストマイナス4cm、
ヒップマイナス2cmだった。

日々、いろんな人に会うが、
こういった小さな変化に気づける人と
気付けない人がいる。

モッチリーニくらい劇的な体型の変化に
気づけるのは当たり前だろうけど、
こういった微差に気づける人は
いろんな「小さな変化」に敏感だと思う。

河合さんは何度かこのブログで紹介しているが、
生地探しから、デザイン、裁断、縫製、ボタン付け、
さらに言えば、事務処理なんかも全て一人でやっている。

その仕事の姿勢に感銘を受けるし、
このように丁寧にきちんと仕事をこなしてくれる
職人さんを応援したくなる。

ただ丁寧にやるのではなく、
そこには河合さんの哲学や美学が感じられ、
まさに他では手に入らないものがある。

スーツが完成し、
ジャケットをオーダーしてるわけだけど、
次はコートかなって考えていて、
そのぼんやりした僕の想いを伝えると、
生地選びから仕様などもいっしょに
丁寧に考えてくれた。

僕の雰囲気やキャラクター、
また使用シーンなども踏まえた上で、
手持ちのコートをみて、
女性性の強い生地を選んでいる傾向にあるので、
どうせならこちらの男性的な生地を選んでみては、
みたいな、より深い提案をしてくれる。

これだけ、情報が溢れているから
「提案力」にこそ、大きな価値があると思う。

主張とも言えるかもしれないね。

河合さんは、今度は8月末に来日らしくて、
友人を連れてきてもいいっていう話になってるから、
もし興味ある人いたら、いっしょにオーダー会に行く、
企画なんかしてもいいかなって検討中。

最後に、河合さんのサイトから
河合さんの人柄がわかる記事を引用しよう。

シワの美学

私には、着る時には四六時中身につけるジャケットがあります。
春夏モノとしての鮮やかなブルーのヴィンテージモヘアのジャケット。
それから、秋冬物の紡毛ウールの緑のチェックジャケットです。こちらも生地は30年近く前のモノ。
私のことをご存知の方ならよく見かけられたことがあると思います。
これらはよっぽどのことが無ければ日本-イタリアの飛行機の中でも脱がずに着ています。
勿論この2着はどちらも生地がしっかりと重量感のあるものだからこういう着方ができるということもあります。
それでもちゃんとメンテナンスをして、服の休息日も設けた上で着続けています。

本当に日に日に自分に馴染んで行っているのがわかります。
表情もいい感じに力が抜けてきました。
今となっては、体に合わないニットよりも快適です。

表地にある程度の耐久性があれば裏地は後々交換がききます。
ウエスト周り等寸法の増減があってもある程度までは対応できます。
イタリアではこの手の修理は毎日のように持ち込まれています。
修理をしながらでも長い時間をかけて、
まるでジャケットを育てるかのように着こんでいくのがイタリアでの常識です。

そうすると当然服にシワが入っていきます。
脱いで翌日にはとれているシワもあれば、そうではないものもあります。

でも出来ればシワを目の敵のように敬遠しないでください。
もちろん来る日も来る日も同じ服を着て弱らせるのは間違いですし、
生地によってそれぞれ耐久性も違いますけれど、
間に数日の休息日を挟みながら、
きちんと愛情を注いで扱ってあげると服は必ず育ちます。

醜いシワは消えて、良いシワが残る様になってきます。
「良いシワ」とはなにか。
私はいつも人間と同じです、と説明させていただいています。
美しい生き方をされている方は、顔に刻まれたシワも美しく映ります。
これは元気いっぱいの20代にはどうしても真似のできない魅力です。
つまり完成直後の魅力とは違う魅力が、付き合い方次第で産まれてきます。

この「良いシワ」を蓄えるには時間と愛情が必要不可欠です。
私が、昔からの手間のかかる作りに拘って手作りをしているのは、ただひたすらこのためです。
縫い上がった今日、手のニオイを感じるためだけにしているのではありません。
また、単なる「手のぬくもり」という情緒論に終始するつもりもありません。

10年後、20年後、ちゃんと服があるべき姿を崩さず留めていられる様に一針ずつ刺していく訳です。
永く服を愛して頂いていつか、
お客様の心にもしっくり馴染んで、全く違和感を感じない、
本当のSecond Skinと感じて頂ける様に。
そうしてまるで自分の皮膚の様に馴染んだジャケットを着た男性が
もっと日本に増えてくれば、日本の街中の景色が変わるだろうと思います。

気難しく英国趣味に走らなくても、無理してイタリアの伊達男を気取らなくても、
その人らしいその人だけの装いになるはずです。
それが私の願いです。

河合さんの手仕事からは
たくさんの学びや気づきが得られるよ。

ではでは、今日はこのへんで。

島田晋輔

PS)

そうそう、
河合さんに女性ものはやってないんですか?
と聞いたら、今はお受けしてないってことだった。

全てひとりでやっていて、
カラチェニに納品するほどの腕前だから、
できると思うのだけど、
そこも彼の美学があって。

「まだお金をいただいて
 できるレベルではありません」

とのこと。

技術だけでなく、デザインも含めて
女性ものは今は難しいかな、と。

どこまでも謙虚でストイック。

世界の最前線で活躍するサルトだからこそ、
妥協しないのだろうね。

PPS)

そういえば。

今回、河合さんにおもしろいタイ職人を紹介してもらった。

ジャンニさんだったかな。

おじいさんが出版社を経営していたとかで、
情報発信もはじめていく個性的なタイ職人らしい。

独特なヴィンテージ生地を使っているし、
セッテもできるってことなので、
今度オーダーしてみたいなって思う。

PPPS)

今日の一曲はこちら、、、



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コメント

    • MAKIER
    • 2016年 3月 09日

    サティは、大好きです。フランスのオンフルールに、とてもシュールなサティ博物館があります。彼が直しながら使い続けていた傘がありました。物が持っている時間は、作り手の情熱に比例するのかもしれませんね。物が持っている気(エネルギー)は、持ち主の思いに反応するのかもしれません。河合さんのクリエートする服を着てみたいです。

    • サティ、いいですよね。

      サティ博物館行ってみたいです。

      直しながら使い続ける傘、、、いいですね。

      作り手の想いとともに、人生を豊かにしていきたいです。

    • ギアッチョ龍太
    • 2016年 3月 12日

    服のシワも人間のシワも同じだというのはとてもステキですね。
    共にステキな時を重ねて行く、そんなステキなパートナーたる服に出逢いたいものです。

    • 河合さんはスーツを育てるみたいな表現もしますからね。

      50、60になってから下ろし立てのスーツを着てるのはちょっと、、、という指摘をして、やっぱり人前に立つようなひとは、30代からしっかりとパートナーとなるスーツを育んで、40、50、60と歩んでいただきたい、みたいなことを言われますからねー。

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