Walk on the Wild Side〜ワイルドサイドを歩こうよ〜

銀座。米倉の音。

静かなバロック音楽が流れる店内。

ザクッザクッと髪を切る
心地よい音が耳元で鳴る。

「切りましょうか」

とだけ言った米倉さんは、
僕から細かい要望を聞かずに
淡々とハサミを入れていく。

50年。

髪を切るようになって、
50年になるという
米倉さんは70歳を迎えた。

お祖父さんの代から
続く理髪店米倉は、
日本を代表する
床屋の元祖。

政財界や文化人に愛用者が多く、
松下幸之助や池波正太郎なんかも
通っていたという床屋のルーツである。

各界の一流人を相手にしてきただけあって
洗練された程よい時間を与えてくれる。

口数も少なく押し付けがましくない。

理髪店は、もともと髪を切るだけでなく
オトナの社交場でもあったのだから、
店主との距離感は大切だ。

「髪を軽くすると頭の中もすっきりしますからね」

大切な会議や打ち合わせの前に
米倉さんのところに来る
社長や官僚が多いらしい。

ただ単純に髪を切れば良い
というわけではない。

米倉さんの仕事からは哲学を感じる。

50年ずっと取引している
という浅草の油商人から買っている
オリーブオイルを使った頭皮のマッサージ。

丁寧なシェービング。

僕以外いない店内は
静かなバロック音楽も相まって、
時空間を飛び越えていくようだった。

内省。

インプットやアウトプットが
大切とよく言われるし、
僕もそう思うのだけど、
それと同時に、
自分と対話する時間、、、

内省の時間を大切にする
ようにしている。

テクノロジーやコンピューターの発展、
キレイすぎるロジックと完璧なシステム。

インターネットやスマホなど
便利なもので溢れるようになった。

どこにいても誰とでも簡単につながれるし、
オンオフもパブリックもプライベートも関係なく、
いろんな情報が「不」自然に入ってくる。

それはそれで大きな恩恵を受けているのだけど、
同時にダメージも受けてるわけで、、、

意識して、情報をシャットダウンしたり
距離をとったりして、
チューニングしないと、
狂ったまま不協和音が鳴り止まない
人生となってしまう。

アポトーシスの機能をオフにした細胞が
ガン細胞に変化していくように、
日々の生活もどこかでリセットし、
メンテナンスをしないといけない。

そんなふうに感じる僕は、
忙しくてやることだらけでも、
人と会わず、自己対話する時間を
とるように心がけている。

米倉での時間もそういう意味で、
僕の貴重なメンテナンス時間となった。

2時間近い理髪を終え、
礼を言い、店を後にした。

iPhoneの電源を切り、
その足でお気に入りの寿司屋へ
向かった。

毎日誰かと食事することが多いから、
たまにはこうやってスマホの電源を落とし、
自己対話しながら、ひとりで寿司を食べてみる。

長くなってしまったので、
寿司屋の話はまたいつか。

大事なことは、
自分で意識して強制終了ボタンを押し
定期的に再起動をするってことだ。


島田晋輔

PS)

渡辺さんの会社の事務所の
本棚にあった米倉さんの本
「床屋の真髄」を読んで
米倉さんの哲学に触れてから、
一度は行ってみたいと思う
場所だった。

東京出張の合間、
時間ができたので、
リフレッシュもかねて
行ってきたけど、
忙しいときほど、
こういった時間を大切にしたい。

PPS)

髪を切るなんて
1000円カットでいいじゃん!

って思うかもしれないけど、
ヘアスタイルが整えばなんでもいい、
と妥協するってことは、、、

自分自身に、そして、
自分の人生に妥協している
のといっしょ。

米倉の理髪は誰でも気軽に払える価格ではないけど、
こういった自分の聖なる時間のために、と考えれば
価値は大きいし、とても安い買い物だと思う。

ザクッザクッと髪を切る音は、
僕に大切なことを思い出させてくれた。

PPPS)

米倉さんのところでは、
バロック音楽がかかっていたので、
今日はマルカントワーヌ・シャルパンティエでも。

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