Walk on the Wild Side

マクドナルド訴訟

マクドナルドのドライブスルーで
コーヒーを買ったステラは、
不注意でコーヒーを自分に向けてこぼしてしまい、
大火傷を負う。

ステラは、

「マクドナルドのコーヒーが熱すぎた」

と主張して訴訟を起こした。

陪審員の出した評決は、、、


行動経済学者:彼女にとっては、大きな災難だったと言えるでしょうね。

そこで退院したステラは、この火傷は「マクドナルドのコーヒーが熱すぎた」ことが原因だと主張して、マクドナルドに治療費と慰謝料を含めて20000ドル請求したのです。

会社員:えー?いくらなんでも、それは難癖じゃないですか?だって彼女は、自分で勝手にコーヒーをこぼしただけでしょう?

行動経済学者:日本のように自己責任を重視する文化圏では、このような場合でも自業自得だと黙って我慢する人が多いのかもしれませんが、なにしろアメリカは訴訟社会ですからね・・・。

ステラの請求に対して、マクドナルド側は「当社の責任は認めないが、お見舞い料として800ドルを提供する」答えました。

会社員:難癖でも何でも言ってみるものですね。そんなことで800ドルも貰えるのなら、よかったんじゃないですか。

行動経済学者:いえいえ、とんでもない。このマクドナルドの態度に逆に憤慨したステラは、損害賠償訴訟を起こすことにしたのです。彼女の弁護を引き受けたのは、1986年に同じようにマクドナルドのコーヒーで第三度の火傷を負った女性の弁護を引き受けて、27500ドルの賠償額を勝ち取った経歴を持つリード・モーガン弁護士でした。もっとも、その訴訟では、コーヒー・カップをひっくり返したのはマクドナルドの従業員でしたが・・・。

ステラの裁判が始まると、モーガンはマクドナルドの品質管理担当者から「マクドナルドのコーヒーは。通常摂氏82度から88度の温度で提供することになっている」という証言を引き出し、これが同業他社の販売するコーヒーの温度よりも高いことを提示しました。つまり、「マクドナルドのコーヒーが熱すぎた」というステラの主張は、ほんの僅か数度ではあっても、同業他社に対しては成立することを立証したわけです。

次にモーガンは、高齢の婦人が痛い思いをして皮膚移植をし、11000ドルの治療費を支払わなければならなかった大火傷に対して、いかにマクドナルド側の態度が冷淡なものだったか、わずか800ドルという見舞料がどれだけ婦人の心を傷つけたかを陪審員に訴えました。

会社員:いやはや、私の会社でもクレーマーの顧客を相手にすることがありますが、その弁護士のクレームというか屁理屈もすごいものですね!

行動経済学者:驚いていただくのは、これからですよ。

原告側と被告側双方の主張と証言を聞いた陪審員は、4時間以上かけて審議した結果、マクドナルド側に責任を認め、286万ドルの損害賠償を命じる評決をくだしたのです!

会社員:なんですって!286万ドルというと、当時の5億円近い金額じゃないですか!

大学生C:信じられない!どういう理屈で、そんな金額が出てきたんですか?

行動経済学者:それがさきほどから話しているアンカリングの効果ですよ。

過去の判例では、マクドナルドの従業員がコーヒー・カップをひっくり返したために顧客が第3度の火傷を負ったケースでさえ、27500ドルの賠償でした。ですから、このケースを基準に考えれば、自分でコーヒー・カップをひっくり返したステラへの賠償は、どう考えてもその額を下回るに違いありません。

そこで、モーガン弁護士は、過去の判例には触れず、まったく異質なアンカリングを用いました。まず彼は、「マクドナルドのコーヒーが熱すぎた」ことが同業他社に対して成立している以上、マクドナルドには責任があり、懲罰的損害賠償を支払うべきだと陪審員を説得しました。それでは、その賠償額として、幾らが妥当なのか?ここでモーガン弁護士は、「マクドナルド全店のコーヒーの売上高」を基準にしてはどうかと提案したのです。

会社員:それは変な話だなあ!いったいどこから「マクドナルド全店のコーヒーの売上高」が関係してくるのかわからないのですが・・・。

行動経済学者:それが巧妙なアンカリングなんですよ。マクドナルドは熱すぎるコーヒーで老婦人を傷つけたのだから、そのコーヒーの売上高の1日分か2日分ぐらいは提供してもよいのではないか、しかも多国籍事業を展開する大企業なのだから、懲罰の意味を込めて高額でもよいではないかという論法が、陪審員たちに植えつけられたわけです。

あくまで彼らに白熱した議論を生じさせたのは、懲罰的損害賠償として「マクドナルド全店のコーヒーの売上高」の「何日分」を命じるべきか、という問題でした。しかも、ある陪審員が1週間分だと言い張って譲らず、それでは賠償が1000万ドル近くになって、いくらなんでも高すぎるのではないかと皆で説得し、ようやく「2日分」という結論で合意したそうです。

全世界の「マクドナルドの全店の売上高」は、1日に約135万ドルですから、2日分で270万ドルになります。陪審員は、この懲罰的賠償額に、医療費・経費等の保証的損害賠償16万ドルを加えた合計286万ドルをステラに支払うようにマクドナルドに命じる評決をくだしたわけです。

大学生C:信じられない評決ですね。それでマクドナルドは5億円を支払ったんですか?

行動経済学者:いえいえ、もちろんマクドナルド側は評決を不服として訴訟しましたが、ステラが81歳になった時点で両者は和解しました。和解額は公表されていませんが、65万ドル近いものだったと言われています。

大学生C:それだって、すごい金額!アンカリングがどんなに不合理な結果を導くのか、ビックリを通り越して、恐ろしくなってきますね!

引用:感性の限界 不合理性・不自由性・不条理性 (講談社現代新書) 高橋 昌一郎



これは「感性の限界」からの引用。

マクドナルドのこの訴訟は実際にあったものだけど、
この例を用いて「アンカリング」の話を
行動経済学や認知科学の面から話している。

「アンカリング」というと、
セールスコピーやマーケティングを勉強していると
必ずどこかで学ぶ一つだと思う。

今回のマクドナルド訴訟のように、
「ビジネス」のときだけでなくて
いろいろな場面でアンカリングは行われる。

有名なカーネマンのルーレットの国連クイズの例も
紹介されてるけど、僕たち人間は、

関係のないランダムな数値

にも引っ張られてしまう。

例外なく誰でもだ。

人間っていうのは、
関係のない数値に引っ張られしまうので
注意してくださいね!


と伝えたうえで実験をしても
やはりアンカリングされてしまうことが
実験結果でわかっている。

意思や頭では解決できないのだ。

マクドナルド訴訟は
おもしろい話としての紹介ではなくて、
僕たちのいろいろな実生活の場で
おきているというメッセージだった。

知っているのと知らないのとでは
ずいぶん違うからね。


島田晋輔

PS)

そうそう、
ビジネスの現場でも、
店舗でのサービスメニューを
値段の高い順に並べただけで
売上が上がったという話も少なくない。

アンカリングされて、
大きな数字が基準になってしまうからね。

他にも、
ブログってだいたい1記事30分くらいで書けるんですよ!
みたいなアンカリングの仕方もある。

1記事30分

というのがアンカーとなって
早く書けるようになる。

アンカリングされてないと、
1記事書き上げるのに、
2時間も3時間もかけてしまうからね。。

僕たちはバイアスから自由にはなれない。


PPS)

今日の一曲はこちら、、、


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  • 佐久間

    これは強烈な話ですが、、いかにこういったアンカリングやバイアスと上手に付合っていくかですよね。いかに相手に伝えるのか。「印象の問題」という話もありましたが、、このあたりを追求していきたいと思います。

    • そうなんですよ。

      理屈でなくて「印象」なんですよね。

      感情で決定し、理論で理由付けする

      っていうのは、科学的に証明されてきてますからねー。

      感情で意思決定しているということを
      踏まえて、相手と対話していかないといけません。

  • Slow Man

    今日、異業種交流会に出てきましたが、島田さんと同じことを言われる方がいてびっくりしました。そしてその方は演出がとてもお上手でした。アンカリングとは違うけど、相手の意識を引っ張るものは数字であれ、演出であれ似ているように思えました。

    • 相手にどうみてもらうか、、、演出って大切なんですよね。

      ・ファッションは相手のためのもの
      ・スポットライトはお客さんにあてる

      いろんな角度から同じことを言っていると思います。

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